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こうのまんがの謎? [こうのまんがの謎]

「こっこさん」 あの黄色い花は何?

 こうのまんがには四季折々の草花が描かれ、登場人物たちが確かに我々と同じ時を生きていることを実感させてくれる。 「こっこさん」の2話目にあたる ”こっこ草”の回には黄色い4弁の花が描かれる。 やよいちゃんが『ひよこみたい』と言ったその花は、「ぴっぴら帳」の”その64”のタイトルバックに描かれる花と同じと思われるのだが、この夏の花は何? ヤマブキソウ、クサノオウが候補なんだけども... ちなみに花言葉はそれぞれ、”すがすがしい明るさ”、”思い出”などがあるようですが。


「ぴっぴら帳」 あの正月の花は何?

 「ぴっぴら帳」の”その34”のタイトルバックに描かれる花。 これは、正月によく見たような花なんだけど、ベンケイソウ? カランコエ? ちなみに花言葉はそれぞれ、”おだやか、優しい心”、”幸福を告げる、たくさんの小さな思い出”だそうです。


「ぴっぴら帳」 キミ子の野草食は作者の実体験?

 「この世界の片隅に」の代表的なエピソードである”第8回(19年5月)”では、すずさんが工夫して野草を美味しそうな料理に仕上げている。 この料理、てっきり当時の婦人誌から参考にされたのだと思ってたのですが、実はそのいくつかは作者のオリジナルレシピだという。

 そういえば、「ぴっぴら帳」の”その50”ではキミ子の野草食が紹介されているが… ひょっとしてこれは作者の実体験? この当時(H13年6月)の作者は初の単行本が出たり、連載も3本に増え(ぴっぴら、長い道、かっぱ)たりと、仕事は順調になったけどまだまだ裕福とは言えない生活を送ってたんだろうなぁ…(あくまでも想像です)


「長い道」 道と竹林は何故別れさせられた?

 「長い道」のことを作者は自ら”貧乏仮面夫婦まんが”と呼んでいる。 親の都合で結婚させられた二人は、表面上は夫婦(というかヒモと情婦の関係に近い)なんだけども基本 セックスレスだ。 それは、相手に本当に好きな人が出来た時にすぐに別れられるようにとの、結果的に互いに相手を思ってのことなのだが… そして主人公の”道”には もう一つ、この結婚生活を享受できない理由がある。 それは学生時代に別れさせられた、かつての恋人の竹林の消息だ。 どうやら竹林側の親からの猛烈な反対にあって強制的に離別させられたようだが、この過程で竹林は一時期 ”立派”ではなくなってしまい、道の心にも深い傷を残した様が伺える。

 道は相手の”実家に電話して連絡先を教えて貰えば済む”だけの距離にいながらも決してそのような行動をとることは出来ずに、ただ”シアワセになったかなぁ”と漠然と竹林の行く末を案じているだけなのだ。 そして、自分だけシアワセになっていはいけないと、自分から積極的に愛を求めることを放棄して、結果 仮面夫婦を続けているのである。 

 この仮面夫婦の前提条件は、”やった!”の回での一夜の過ちで脆くも崩れてしまうのだが、この時、道が荘介よりも早く立ち直っていることより、この夜の情事は道にとっては初体験ではないことが推測される。 また、”してません!”の回で、荘介の「子供ほしいかい」という言葉への暗い反応より、妊娠することへ恐怖を感じているようにさえ思えてくる。 ひょっとしたら、道は学生時代に竹林の子を妊娠するものの堕胎を経験していたのではないか?とさえ疑いたくなる。

 それにしても、なぜ竹林の親は道との交際を許さなかったのだろうか? なぜ、後に息子が”立派”でなくなる原因となるほどの”大反対”をしたのだろうか? おそらく、竹林の親は道の側の家系を快く思ってなかったのだろう。 ”酔うと何でも人にあげる癖”のある道の父親は本編には登場しない。 その代りに登場する道の母と姉は日ごろから非常に派手な身なりをしているのだが、実家そのものは大金持ちというほどでもなく小金持ち、というか成金なのかな? ほとんど盗人のような荘介の父と親交があることからも、天道家は実は日本における社会的マイノリティの家系なのではないか?と思ってしまうのだ。(あえて、それが何なのかは言わないが)

 もう一つの可能性。 それは、この作品には初期の こうのまんが にはお約束だった、広島県出身者が出ていない、あるいは明示されていない という事。 まさに「桜の国」の根底にあるテーマなのだが、しかし… 作者が道と竹林の関係に決着をつけるために自費出版で「道草」という作品を刊行したのは、編集さんから「ヒロシマの話しを描いてみないか?」と問われる半年前の話しなのだ。

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”上巻”の索引 [索引]

 ”番外”が増えすぎて、このブログ本来の趣旨である各話の感想が下の方に埋もれてしまったので索引をつくりました。



”上巻”の索引



わたしは誰?、なぜ「まんがタウン」?、すずにとっては化け物ではない、いつの回想か?


いつの記憶?、端切れの記憶、座敷童子さんの思い出


あれは江波巻?、客船も軍艦も転覆する、重慶爆撃始まる、「特別再録」はこの回から


いなくなってる森田のおじちゃん、女の子の大問題、繰り返される構図の意図するもの


木炭バス登場は13年ころ、先の大戦とは?、急いた嫁取り、晴れ着のまま働く嫁


録事が書けないすず、干し柿で連想するのは、鬼ぃちゃんはニューギニア戦線


君の名は?、ド、ド、ドリ(以下自粛)、鈴じゃなくて錫?、ドン引きしすぎるお隣さんたち


シンクロする年月、径子が久夫を連れて来ないわけ、配給生活


夢オチ?、すずちゃん、ハゲができとるよ、”さようなら、さようなら広島”の意味


ホームシックのすず、戦場は戦ふ足だ、たんぽぽ、東洋一の軍港 世界一の軍艦


この物語を代表するエピソード、お母さんの万年床、楠公が象徴するもの


海軍記念日と坂の上の雲、3つの演題、自分の評判にふれるすず、日章旗のトリック


大和を見て帰る径子、建物疎開、晴美の種は?


防空壕掘り、長いものを持ったすず、刈谷さんの息子?、間違っていたなら教えてください


「この世界の片隅に」上巻に関連する年表 その1、その2、作者の著作に関する年表

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”中巻”の索引 [索引]

”中巻”の索引



もが→ヤモメ ヤモメ ヤモメ、結構 歪(いが)んでるガラス戸、海岸線は最重要軍事機密


ありの世界に迷い込んだすず、ありこさん、現代の物価を予言するすず


リンとりん、途中まで知っている、すいかの思い出とあいすくりぃむ


あのノート、小春橋から、選ばなかった道は、男女の差


字が読めないリンとあいすが描けないすず、リンの居場所は?、遊郭から出る方法


昔話風、径子の就職先、伯母さんの話しに引く家族、降りられなくなった周作


働きに出る径子、被害者を増やすすず、作者にとって”竹林”とは?、恐るおそる引出しを開けるすず


物思いにふけるリンとすず、代用品、涙を隠す代用たどん


まるで萌え漫画、実は重要回、異質な二つの相談、径子の勤め先が寺だった理由


人妻を抱える水原、活躍も沈没もしない青葉、靖国で会おう


拒むすず、海軍よもやま物語、合祀を拒否する水原


最大の謎回、シ やはり出征していた森田のおじちゃん!、間違っている札


初の戦死者、遺骨でコント?、気丈なお母ちゃん、初夫婦喧嘩


討ち入り?、いとも簡単に心中に付き合うテル、そして第4の方法


ついに来たその日、黒い塊として描かれる戦闘機、いわゆる松山沖空戦、


着せ替え ”はるみ”ちゃん、空襲被害は軽微、素通りする二人、千鶴子出生の謎?


正装のリン、秘密は無かったことになる、リンに生きる目的はあるのか?、そして今生の別れ


「この世界の片隅に」中巻に関する年表、作者の著作関連の年表

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”下巻”の索引 [索引]

”下巻”の索引



表紙カバー、発売日は4月28日?、新装版コミックス、すずさんのトレードマークが?!


空襲時の心得、刈谷さんの息子さん、焼夷弾のなかま、技術バカのおとうさん


唯一の”主観的”ナレーション、誰の夢か?、この回に登場した艦船、この回に登場した主な航空機


戻されたセリフ、男子目線の壁、周作の懸念、赤紙の無い出征、無邪気な晴美


呉の街並みMAP、「下関ゆうても郊外じゃし…」、最後の言葉、畑に突き刺さる爆弾


水鏡に映るもの、晴美の扱われ方が具体的、繋ぎとめられているコマ、つめ草の花言葉


縦長のコマ、なぜ長ノ木に焼夷弾?、北條家が高台にある理由、目を合わさない径子


ないことを思い知るすず、歪(いが)む世界、すみの言葉に読者は2度戦慄する


3回目の7月、呉沖海空戦、民間人を狙う米軍機、砕け散る呉の思い出、”特攻基地”


その日を迎えて、みぎてが救ったすずの命、59秒に凝縮された珠玉のドラマ


暴力には屈しない!、入市被爆拡大を防げなかったか?、現在も確定しない原爆被害者数


なぜ女の人が泣くのか?、唐突に現れる太極旗、ス スグレタ國柄世界ガ仰グ、最後の空襲


北條家に笑いが戻った日、ひょっとして本編の最終回?、枕崎台風が押し流したもの


右手がないことを思い知るすず、漫画史に残るセリフ、リンの喪失を受け入れているすず


晴れそめって?、原爆乙女と径子、座敷童子さんのパラドックス、飛び去ってゆく楠公


水原は何故”いま”ここにいるのか?、なぜ すずは許されないのか?、今も呉を見守る晴美


まだ戻ってない おじちゃん、すみが見た地獄を想像できるか?、なぜボケるっ!!


なぜ”幸せ”じゃない?、作者の怒りの正体、ハッピーでもエンドでもない、兄妹から少女へ


作品世界に関する年表、作者の著作に関する年表


すずさん達が遭難するまでの過程を”リアルタイム”にレポートしたH29年6月22日の片渕監督のtwitterの感想+9月17日の台風情報



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”八月が来るたびに”の索引 [索引]

”八月が来るたびに”

いわゆる”太平洋戦争”や原爆に関する記事です



初めて広島の平和記念公園に行った感想と山口市の原爆死没者慰霊碑の紹介


終戦の前日、トヨタ自動車本社工場に落とされた”パンプキン爆弾”の紹介


里帰りした青い目の人形の返礼人形”ミス愛知”と戦中の日米・日英の友情のお話し


ファミリー劇場で放送される こうのさんの出世作の劇場版の情報とマスコミ批判?


H29年夏に放送された戦争関連番組の感想、本ブログのダントツNo.1アクセス数を誇ります

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”番外”・”はじめに”の索引 [索引]

”番外”の索引

劇場版関連や こうのさんの他の作品の感想です


朝ドラ「ごちそうさん」で描かれた防空法の不条理を紹介


椿だと思ってたら山茶花でした


こうのさんが若き日に通った出版社を巡りました


三島の劇場で見た3回目の感想


ブックオフで入手した「長い道」文庫版のお話し、本作を読み解くためには押さえておきたい一作


呉戦災を記録する会の「呉の戦災」というHPの紹介


おざわゆきさんの「あとかたの街」の感想と画家 香月泰男とこうのさんの意外な縁


日テレプラスで放送された、幻の実写ドラマ版の素直な感想


灰ヶ峰山頂から望む呉市全景。 呉市から投稿しました。


広島・呉を旅した時のレポート


晴美が描かれているという呉市観光ポスターを求めて呉市を旅した時のレポート


後に全国放送された、「コトリンゴの映画音楽」のDVDを広島から送ってもらいました


片渕監督の前作「マイマイ新子と千年の魔法」を見た感想


アクションの特別再録はいつまで続くのかの予想、外れまくってます


Yahooが実施した特別試写会の情報、終了後もアクセスする人が多かったので”終了”と追記


劇場版観客動員200万人の記念ハガキが届いた感想、コピーしてマウスパッドに使っています


ぎふアジア映画祭で開催されたコトリンゴさんのLIVEのチケットを買いに行ったときの話し


劇場版のブルーレイが届いた話しと「ぴっぴら帳」のコミックスの話し


こうのさんの苦悩、web”エッセイ”と「わしズム」、反戦平和作家による先制攻撃 ほか


原画展を見に行った感想と、こうのさんゆかりの名古屋銘菓の紹介


結局、出場はなしでした、出てたら見たのに


ぎふアジア映画祭で見た劇場版とコトリンゴさんLIVEの感想


片渕監督舞台挨拶、トヨタと劇場版の意外な関係


アクセス数が急増した、「ビンの中のお父さん」という番組の感想を書いた記事への感想


宮部みゆき原作の小説と挿絵集の関係を考えてみました


劇場版と片渕監督の旧作のTV放送の情報


広島の先輩がNHK広島で放送された「フェイス 『すずが伝える戦争』」のDVDを送ってくれました。



”はじめに”の索引

本ブログ関連の解説



本ブログを立ち上げる理由と本作の考察


本作を読み解くための、このブログのルール


本作の解読を一通り終えた後の当面のまとめ

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続・広島からの手紙 [番外]

 広島の先輩から年賀状代わりに届いたDVD。 ひょっとしてと思いつつ中を確認すると...

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 あ、やっぱり「フェイス」だ! H29年の1月に中国地方ローカルで放送された、NHK広島製作の「フェイス 『すずが伝える戦争 ”世界の片隅に”込めた思い』」。 のんがナレーションを担当した本作は、単なる映画の紹介にとどまらず、こうのさん、片渕さんのインタビューに加え、スタジオゲストに「夕凪の街 桜の国」実写版を監督された佐々部清監督を迎えて、「この世界の片隅に」込められた”戦争を語り継ぐ”という思いを追っていったドキュメントです。 広島で再放送されたのを録画してくれたんですねぇ。 先輩、ナイスジョブ!!

 戦争を実体験していない世代、しかし体験者に触れることのできたギリギリの世代である作者や映画監督が、どのような思いで戦争を伝えようとしたのか(これは、こうのさんが「夕凪の街」や「桜の国」を執筆した動機でもある)、そして、その結果生まれた作品が実際の語り部活動に与えた影響を、丁寧に掘り下げていった番組です。

 このテーマは、本作を紹介した「クローズアップ現代+」でも取り上げられていましたが(「クロ現+」には、「フェイス」の素材が流用されていることがわかる)、広島局製作というだけあって「フェイス」のほうが、より自分たちの問題として向き合っているのが伝わります。 正月早々、いいものを送ってもらいました。 

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「この世界の片隅に」劇場版 TV初放送は”日本映画専門チャンネル”で 「アリーテ姫」と「マイマイ新子」も! [番外]

 劇場版のTV初放送が、H30年3月18日に「日本映画専門チャンネル」で行われることが決まったそうです。 ああ、そう来たか~。 てっきり、エンドクレジットにも名を連ね、最近、話題作のテレビ放映権獲得に実績を挙げているテレビ朝日か、NHKのBSプレミアムあたりだと思ってたんですが。 まずはCSからね。 ちなみに3月18日は呉初空襲の日ですね。

 本編の前後には片渕監督のインタビューが入るそうですが、つづく3月21日には、本作に加え「アリーテ姫」と「マイマイ新子と千年の魔法」のオンエアもあるそうです。 これは楽しみ。

 地上波、またはBSでの初放送は、やはり8月当たりかな? それとも、巷間で囁かれているように、レプロの圧力で地上波放送はないのかな??

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「荒神絵巻」と「荒神」 [番外]

小説「荒神」 連載'13年(H25年)3月14日~’14年4月30日 朝日新聞朝刊 全403回

「荒神」単行本 初版’14年(H26年)8月30日発行 朝日新聞出版 (発売日 同年 8月20日ころ)

「荒神絵巻」 初版’14年(H26年)8月30日発行 朝日新聞出版 (発売日 同年 8月20日ころ)  

「荒神」文庫本 初版’17年(H29年)7月1日発行 新潮文庫 (発売日 同年 6月28日ころ)


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 この物語の主人公は何故、38歳の女性でなくてはならないのか? これが、この物語を読み始めた私の素直な感想であった。 小説「荒神」は、宮部みゆきが朝日新聞朝刊にH25年3月14日から翌年の4月30日にわたって書き下した異色時代劇である。 こうの史代は、この新聞小説の挿絵を担当した。 連載終了後のH26年8月20日に、新聞掲載時の原稿から大幅に加筆修正された単行本が朝日新聞出版から刊行された。 こうのはこの単行本のカバー挿画も担当している。 さらにH29年6月28日に、単行本の原稿に映画監督の樋口真嗣の解説を加えた文庫本が新潮社から刊行された。 出版社が変わったためか、文庫本のカバー挿画は別の作家が担当している。

 単行本と同日のH26年8月20日に出版された「荒神絵巻」は、新聞掲載時の挿絵に挿絵担当の こうの自身が小説の内容を”要約”した文章を添えた”絵巻”として刊行された。 新聞小説の挿絵集が出版される事自体が異例なのに、さらに挿絵画家が小説家の文章をまとめ直して一冊の本にするという前代未聞の本作は、朝日新聞の”こうの史代囲い込み作戦”の一貫として敢行されたと思われるのだが、よく宮部が出版を許可したなぁと率直に思う。 小説のコミカライズ版でさえ、時に原作者の築いてきたものを踏みにじることがあるのに、この作品は挿絵画家が小説家の本分である文章の改変を行っているのだ。 よほど お互いをリスペクトしていなければ、あるいは反対に相手の実力を よほど見くびっていなければ(やるならやってごらんなさいという感じ)、このような作品の刊行を許したりはしないだろう。 

 「絵巻」は新聞掲載時の原稿を元にしているため、単行本で加筆された香山藩の内情の描写や、物語に重要な役割を担う絵師 菊地圓秀の後日譚が描かれていない。 一方、単行本では削除された おせんが形見分けを受けとるエピソードなどが残されているといった違いはあるものの、基本的には新聞掲載時の「荒神」の内容を非常に忠実に絵巻化している。 それは単なる小説のダイジェスト版ではなく、こうのの手による絵の力と、非常に簡潔に且つ的確にリズミカルにまとめられた文章によって、小説版となんら遜色のない読みごたえを感じさせてくれる。 そう、この絵と簡潔にまとめられた文章による、まるで”漫画的な”メディアの持つ力こそ、私が”宮部は本作に嫉妬しないのだろうか”と素直に危惧した理由であるのだが… 「荒神」と「絵巻」の2作は、対等な力関係でお互いを高めあっている存在と言っていいのではないだろうか。 

 さて、「絵巻」は原作に忠実と述べたが、「ぼおるぺん古事記」で このよく知られた古典を夫婦の物語に昇華させたように、本作でも こうのは密かに微かな挑戦を試みている。 原作ではクライマックスからラストシーンにかけ、ほとんど語られない主人公の主観が、「絵巻」ではより直接的に表現されている。 また、とある登場人物の出自について、より踏み込んだ解釈をしている。 この新解釈については、原作では明確に答えは描かれていないのだが、その解釈を念頭に原作、あるいは「絵巻」を今一度注意深く読み返してみると、ひょっとして?と思える描写が、そこここに散りばめられているのがわかるのだ。 これは、ビジュアルを伴う「絵巻」においてはさらに顕著で、なにしろ、その新解釈をもとに その人物の造形を見ると、思わず「ああっ!!」と叫んでしまうほどだ。(私そうでした) 

 当然、こうのは新聞連載前に物語全体の構想や、各登場人物の細かい設定を宮部から聞かされていたと思われるのだが、その時に この登場人物の裏設定も聞かされていたのだろうか? それとも、宮部から渡されたラフ設定を元に、こうのが独自に想像を膨らませたのか? はたまた、こうのが偶然につくり上げた その人物の風貌を見た宮部が、どんどんとイマジネーションをひろげて行ったのか?? この辺の裏事情を想像するだけでもワクワクする。

 いずれにしても、この こうのの微かな挑戦は、実はこの物語の本質を的確に表しているのではないだろうか? この物語はとかく、一方の主役といえる怪物の描写から、”シンゴジラの元ネタになった”とか、物語の舞台設定や、人が自ら産み出したものによって追い詰められていく様より、”福島第1原発の惨禍を寓話化したものだ”などといった評論がなされがちだが(実際、文庫本の解説はこの流れで行われている)、むしろ純粋に、そして単純に、主人公の朱音が母性を自覚し、自らの生きる意味を見出すという、一人の孤独な女性の悲しき成長譚として見ることが、この物語の本質であり、そして、主人公が38歳の女性に設定されている理由なのではないかと思うのだが…

 朱音がその登場人物(… ああっ、まどろっこしい!! やじだよ やじ!)に将来を優しく諭すシーン、新聞掲載時では「生きのびて、きっと幸せになるのですよ」となっているところを、こうのは この部分にあたるセリフをラストシーン近く(まさに原作に反し、朱音の主観が強調されている場面)に移すとともに、より具体的に「あなたはもう自由なのです。 (ネタバレのため略) 私と兄の分も、しあわせになるのですよ。」としているのだ。(あいかわらず、”幸せ”という字を使ってないな、このヒト) 面白いことに宮部の方も単行本化にあたり、この部分のセリフを「(ネタバレのため略) お山を下りて本来のあなたにお戻りなさい。 そして幸せになるのですよ」と、こうのと歩調を合わせるように修正しているのだ。

 宮部は新聞連載終了後のH26年5月6日の朝刊紙上において、「挿絵と読者に導かれ」という一文を寄稿している。 新聞小説において、作家が連載を振り返る文を寄稿し、その中で読者と挿絵担当に謝辞を述べるということ自体は珍しくないが、この宮部の一文は単なる社交辞令以上のものをこうのに返しているようである。 この作品は、二人の女性作家がお互いの実力を認め合い、互いに競い合った結果の産物なのかもしれない。 この意味で、「絵巻」は こうのから宮部への返歌であり、単行本の加筆部分は宮部から こうのへのリスペクトなのだろう。

 新聞連載は、おせんが佇むシーンで終わるが、単行本は絵師 菊地圓秀の後日譚で結ばれる。 絵一筋の人物として描かれ、自らの人生をかけて生涯最高傑作を描き終える圓秀の姿こそ、宮部みゆきから こうの史代へ送られた最高の謝辞かも知れない。 


(H30年1月1日追記) 「絵巻」には、原作から変えられているところが、実はもう一カ所ある。 それは、とある数字なのだが、これは上記の新解釈を説明しやすくするため、敢えて変えられたと思う。 一つ余るのだ。 原作版の数だと、新解釈で話しを進めようとすると、その余りの説明のためのエピソードが一つか二つ追加で必要となるのだが、こうのさんは新解釈を説明しやすくするため、数を都合の良いように変えたのだろうか?

 しかし、その”余り”の理由こそが、「つちみかどさま」が生を持った真の理由だったのだとしたら… ああっ、宮部みゆきって、何て恐ろしい作家なのだろう!!(褒めています) こうのさんは、この理由に気が付いていないのか? それとも、気が付いているけど、朱音のストーリーに集中させるため、敢えて省略したのか??(このヒト、結構 こういった大胆な省略するからなぁ)

 「荒神」って、実は二人の才能がガチでぶつかり合って出来た作品なのかも知れない。

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アクセス数がスゴイことになっています。 [番外]

 地味~に存続している当ブログのアクセス数が、ここ数日すんごいことになっています。 1週間前からアクセス数が徐々に伸び始め、昨日(H29年12月18日)は とうとう、1日の訪問者数が700人超え、ページビューは900に達しました。 これは、当ブログの通常の10日から20日分のアクセス数です。 おかげで、ソネット・ブログのコミック部門人気急上昇ブログランキングのトップに躍り出ました。(12月12日にも記録)

 これは、10月に書いた ”「原爆死」から「ビンの中のお父さん」へ”という記事にアクセスが集中しているためです。 この記事の中では、9月に名古屋ローカルで放送された 「ビンの中のお父さん~被爆者調査の真の狙い~」の感想を書いているのですが、この番組が12月17日深夜に全国放送されたのがきっかけです。 ABCC(Atomic Bomb Casualty Commission=原爆傷害調査委員会)の活動と そのABCCに原爆で亡くなった父を献体した女性の葛藤を追った異色のドキュメンタリーで、名古屋で放送されたときはさほど話題になりませんでしたが(少なくとも一昨日までは、当ブログがその番組の感想を載せた日本唯一のブログでした)、さすがに全国放送、非常に多くの人の関心を呼んだようです。 「ビンの中のお父さん」は12月24日にも日テレ系のCS局で再放送があるので、興味のある方は是非一度ご覧ください。

 そもそも私がなぜABCCに興味を持ったかというと、それはとりもなおさず 原爆症を発症した すずさんの妹の すみ に生き延びる可能性があるかを探るためでした。(ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、このブログはあくまでも「この世界の片隅に」を読み解くための個人的備忘録です。) 原爆の知識があり、当時の最先端の医療技術を持つアメリカならば すみを治療できるのではないか? ABCCの評判が悪いことは存じていましたが、それでも生きていて原爆症の治療にあたっていた将校さんと どんなことをしても(たとえそれが屈辱的な生体検査であっても)共に生き延び、原爆症の治療の糸口を見つけるための道を選ぶのではないか?と単純に思ったからです。

 それから色々とABCCについて調べたのですが(そのために広島の平和記念資料館にも行きました)、やっぱり、あまりにもABCCの評判が悪いことと(そもそも治療してないし)、すみのような症状を発していても長生きされた方が大勢いらっしゃることを知り(とはいえ、それは同時に長くつらい闘病生活を意味しているのですが)、この仮説は捨てたのですよ。 


 そういえば劇場版ブルーレイのオーディオコメンタリー(キャスト編)で、すみ役の潘めぐみさんが本当にすみの将来について心配していて、それを径子役の尾身さんと おかあさん役の新谷さんが ”大丈夫だよ”と励ましていたのには心打たれました。 本当に、この作品はキャストにも恵まれたんだなぁと思ったのです。


 ABCCは現在、放射線影響研究所という日米共同の研究機関に生まれ変わっています。 その研究の一部には、今なお軍事目的のものも含んでいます。 しかし、彼らの中に真剣に原爆症の研究に取り組んでいる人々もいるという事を忘れてはいけません。  

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