So-net無料ブログ作成

第16回 19年9月 [中巻]

「第16回 19年9月」 掲載 ’07年(H19年)10月2日号 (発売日 同年9月18日ころ)

字が読めないリンとあいすが描けないすず

 産院に寄った後、再び会う二人。 劇場版では描かれなかったお菓子の絵を届けるシーン。 リンは小学校に半年しか行ってないのでカタカナしか読めないということだが、学校をやめたきっかけは母の死? いつ奉公に出されたか、どれだけ彷徨ったかにもよるが、リンがすずより年下の可能性もある。 余談だが、久夫と同い年の私の母も中学校を二日しか行っていない。 親が死んで翌日からは長男と長女が働きに出、次女だった私の母は下の7人の弟・妹の世話をしたのだ。 朝鮮動乱直前の25年4月のことだ。

 結局、あいすくりいむが描けなかったすず。 でも下巻の”右手”は…

リンは職業婦人

 例のノートの切れ端に書かれたリンの身上書。 ここですずは初めてリンの名前を知ることとなるが、リンの職業が”二葉館”の従業員。 わが国では33年4月に「売春防止法」が施行されるまで売春は合法で、れっきとした職業だったのだ。 だから、リンの身分は”職業婦人”なのだ。

リンは気付く

 今度はすずの自己紹介。 リンの反応、「ほー じょー」の後が不自然に長い。 リンは”長之木から来た北條”さんで、まず周作のことに想いを巡らし、そして隣の優しい娘のことについて考える。 妹ではないと直感する。 すずが周作のことを”夫”と言った後の反応がやや短いのは、ああやっぱりそうかという確認なのだ。 

戦時下無月経症

 子供が出来なかったことをリンに相談するすず。 すずの症状は、想像妊娠といった生易しいものではなく、過度の栄養失調とストレスからくる無月経症であることが作者注で説明される。 実は平和な現代においても、トップ女性アスリートの間に同様な症状があることが知られている。 カロリー制限と過酷な運動、そして、やはり強烈なストレスからくる”スポーツ無月経症”というやつだ。 ”うらやましい”というリンのお気楽な感想に反して、骨粗しょう症による骨折のリスクがあることが知られており、こちらも深刻な問題となっている。 すずたち戦時下の女性は吉田沙保里並みの強烈なストレスとプレッシャーにさらされているのだ。(吉田さんがそれかどうかは知りませんが) 

まるで噛みあわない二人の会話

 ヨメの義務に関しての二人の会話がまるで噛みあわないのが面白い。 リンは意地悪で言っているのではなく、あくまでも自身の経験の範囲で率直な意見を言っているに過ぎない。 それだけ、この二人の置かれている境遇は違うのだ。

売られた子はリン自身

 女の子は高く売れるしねぇというリンのセリフ。 のちに読者は、それが自分自身のことを言っていると気付く。 本当に、リンは自分の経験した世界のことを素直に話しているのだ。

名前で呼び合う二人

 この二人、いつしか名前で呼び合うようになる。 すずが長之木では”北條のヨメさん”と呼ばれ続けるのとは対照的に。 お互いの職業や肩書ではなく、相手の人柄に惹かれあっているのだ。

リンの居場所は?

 ”何かが足らんぐらいで、この世界に居場所はそうそう無うなりゃせん”とのリンの言葉に安堵するすず。 ここで疑問、リンは今の世界が自分の居場所と受け入れているのだろうか?

 親に売られ、奉公先から逃げ出し、ほうぼうをさまよったリン。 草津で幼いすずやおばあちゃんに情けをかけてもらい、流れ着いた呉で遊郭のスカウトおばばに拾われたリン。 そして、二葉館では周作に束の間の夢を見させてもらった。 自分が見た束の間の夢を、朝日町に来る男たちに見させてあげようとしているのか?

遊郭から出る方法

 この時代の遊郭にいる女は、借金のカタに肉親に売られたか、食うために自ら廓の門をくぐった者たちだ。 この女たちが再び外の世界に戻る方法は主に三つある。 一つ目は、自身の稼ぎで借金(含む補償金)を返済すること。 気の遠くなるような年月がかかるだろう。 二つ目は、どこかのお大尽に”お身請け”してもらうこと。 この場合は、大金持ちの3号さんか4号さんくらいがせいぜいで(2号さんは超一流芸者など)、周作のようなまっとうな公務員の正妻に迎えられるのは超レアケース。 リンにとっては夢のような話しだが、遊郭の女であるリンは、またそれが儚い夢であることも知っている。 こんな自分を気に留めてくれた人がいたという事実がリンの心の支えなのだ。 そして、その人は”シアワセになったかなぁ”と、日々、思いを巡らせていたのだろう。 

 そして今日、偶然にもその思い人の”妻”なる人が自分の前に現れた。 この自分にも心を素直に開いてくれる、心の優しい大変良い娘のようだ。 もう、あの人のことは”心配しなくてすむ”のだろうか? 二葉館の2階からすずを見送るリンの心の中、私にはそう思っているように見える。

 遊郭から出る三つ目の道、それは客から労咳や梅毒などの悪い病気をもらい、棺桶に中に入って出る方法だ。 のちのテルのように。

 そして、この時代に限って言えば、もう一つだけ方法がある。 それは別の回の時に。 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:コミック