So-net無料ブログ作成

第26回 20年3月 [中巻]

「第26回 20年3月」 掲載’08年(H20年)3月18日号 (発売日 同年 3月4日ころ)

ついに来たその日

 20年3月19日、それはいつものように穏やかな春の朝... のはずだった。 それぞれが朝の身支度を整え、仕事に赴こうとする時、米軍空母が日本に近づき、艦載機を発艦させる様子が水墨画のようなタッチで描かれる。 そういえば、いつの間にか外出する男子はヘルメットを、女子は防空頭巾を携行するようになっている。 周作は第24回からヘルメットを身に付けているな。 出勤する径子の後ろに砲台が描かれているのも印象的。

(H29年5月11日追記)

020.jpg

現在の灰ヶ峰山頂の展望台。 〇部分が元々の高射砲台の土台だったところ。 

 この時、日本近海に12隻もの米軍空母が迫っており、実は前日の18日から激しい戦闘が始まっていたのだ。 九州沖航空戦と呼ばれるこの一連の戦闘。 既に帝国海軍には迎撃できるまともな空母機動部隊はなく、陸上基地を飛び立った航空機により迎撃は行われた。 特攻機による体当たり攻撃も行われたが米軍機動部隊はやすやすと包囲網を突破、翌19日の朝には一部の空母部隊が室戸岬沖80キロまで接近し、その艦載機を発進させたのだ。 

黒い塊として描かれる戦闘機

 すずたちの前に突然現れる米軍機は黒い塊として描かれている。 まあ、普通の主婦には航空機の知識なんてないから、本当にただただ黒い無数の塊が迫ってきているように見えたんだろう。 これを、色の付いた防空用識別弾と合わせて、”すずの描いた絵”として表現した劇場版の演出は秀逸としか言いようがない。 我々が劇場で、”空襲なのになんて美しいんだ!”と思ったように、当時の人々も ただただ訳も分からずに空を眺めていたのだろう。

(H29年10月21日追記) 原画展の図録集の解説によれば、中巻P120の絵は こうの先生が資料として見た戦災体験集の絵からインスピレーションを受けて描かれたとある。 ああ、そういえば...と、「呉の戦災」HPの「呉戦災から60年-記念募集体験記-」を見返すと、まさにその絵を見つけることが出来る。 木村フジエさんの描かれた灰ヶ峰の背後から無数の黒い飛行機が湧いてきている絵だ。 本作の中巻P120の絵が控えめに描いてあるのかなと感じられるくらいに強烈なインパクトがある。 なんて言っていいのだろう。 もし、この光景を目撃していたら、自分も恐怖を感じることにすら気づかずに、ただただ空を見つめていたのかもしれない。 なお、劇場版のエンディングには、木村さんのお名前がクレジットされている。 

いわゆる松山沖空戦

 この呉初空襲は、軍記もの好きの間では、”松山沖空戦”と言った方が分かりやすいだろう。 軍記物的に言えば、”3月19日朝、突如呉軍港を襲った米軍機に対し松山基地を発進した第323航空隊(剣部隊)の「紫電改」が迎撃、1時間余りの戦闘で米軍機52機を撃墜(54~58機の説あり)。 これに対しわが軍の損害は敵機に体当たりした偵察機「彩雲」を含めて16機と、わが軍の圧倒的な勝利であった”と。 そして、飛行機好きの少年たちは日米の戦闘機のスペック比較に話を弾ませ、どの戦闘機が一番かで盛り上がるのだ。 決して、その時、地上に居た人のことを考えたことは一度もなかった。 なお、当時の米軍の記録によれば、撃墜された米軍機は実際は十数機程度だったという。

熟睡するおとうさん

 それにしても、夜遅い残業から夜勤までこなすおとうさん。 広工廠の第11航空廠所属だそうですが、いったい何の開発・生産を担当しているの? 

 劇場版の晴美の質問に答えるならば、我らが紫電改の誉21型の離昇馬力(短時間のMax馬力)が1990馬力。 対するグラマンF6Fヘルキャットが2000馬力、F4Uコルセア(1D)なら2250馬力です。 チョット負けてますね、おとうさん。 もっとも、戦後に同じくらいの馬力の四式戦「疾風」を米軍が整備して、米軍が使ってるオイルとガソリンを使って飛ばしてみたら、最大速度が公称624km/hと言われていたのが687km/hも出たということなので、条件が同じなら勝ってるかも知れませんね。

 この呉初空襲の前の3月9日から10日にかけて、東京が大規模空襲に見舞われた。 東京大空襲である。 死者10万人以上、被災者100万人以上と言われている。

 3月13日 名古屋空襲。 3月14日 大阪空襲。 3月15日には硫黄島が米軍に占領され、同22日に日本軍守備隊全滅。 3月19日 再び名古屋空襲。 名古屋駅消失。 既に日本本土防空に有効な術はなかったのである。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:コミック

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0