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第14回 19年8月 [中巻]

「第14回 19年8月」 掲載 ’07年(H19年)9月4日号 (発売日 同年8月21日ころ)

迷子になったすず

 朝日町で迷子になったすず。 途方に暮れて地面に描くのは 夫でも懐かしい広島の故郷でもない、すいかとキャラメル。 すいかは先ほどの闇市で見たばかり。 いずれも幼い日の思い出の味だ。 やっぱり、口には出さないけど質素な代用食ばかりでひもじいのかな?

リンとりん

 すいかの絵が縁でリンと知り合う。 作者のデビュー作で、リニューアルや掲載誌変更を経て、実に11年半にもわたって描き続けられた「街角花だより」。 この作品には、おっとりした店長のツッコミ役で”りん(凜)”という女性が登場する。 恋愛欲旺盛で、バイト先の花屋の売上アップのためには、男をたぶらかすこともいとわない彼女だが、一番新しいエピソードである「コスモス日和」(2007年1月)の回のりんは、時おり リンを彷彿させる表情もする。 作者は後半の展開に欠かせない重要なこの役に、あえて馴染みあるキャラクターを使ったのであろうか? 

 容姿という点では、「さんさん録」の仙川さんにもリンの面影を見ることが出来る。 (H29年7月4日追記) 仙川さんの場合は外観よりもむしろ、決して結ばれない思い人のシアワセを案じているうちに、その思い人の近親者である主人公に出合い、やがて主人公の人柄に惹かれていくという構図がリンとそっくりである。(男女の違いはあるが…) りんも同様に、主人公とその家族に複雑な恋愛感情を抱いている。 この不思議な三角関係は、こうのさんの追い求めているテーマの一つなのかもしれない。 

 このように、容姿が似ていて、共通の恋愛感情を持つこの3人だが、リンとほかの二人では性格が若干異なるように思える。

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 これは、こうのさんの漫画に登場する女性キャラの性格と恋愛嗜好を自分なりに分類してみたものだ。 こうのさんのキャラは複雑で、一見おとなしそうな人でもその内には激情を秘めている。 また、からむ相手によってもその感情表現は変わってくるので、これはごく一般的な分類だと思ってください。(あくまでも個人の感想です)

 こうの漫画では、おっとりした主人公に活発な美人キャラが突っ込むというパターンが多いので、主人公は第Ⅳ象限側、ツッコミ側は第Ⅰ象限側にいるが、リンはどこの象限なのだろう。 外見的には派手なおねーさんなのだが、意外と奥ゆかしい。 男を誘うけども、それはあくまでも営業だし、時たまボーっとしているように見えるのは すずの言葉の中に周作の影を見出した時だ。 リンからは周作への”思い”と すずへの”思いやり”は感じることが出来るのだが、本当はどういう娘なのかよくわからない。 そういえば、リン本人は実質3回しか登場してない! 刈谷さんの息子さん並の希少キャラなのだ。

 ちなみに、以下はこうの漫画の作品のつながりを示した図です。

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 気付いた分だけですが、けっこう作品間のつながりがありますね。 ”すず”さんとやよいちゃんの鈴に関係があるのかどうか? 

途中まで知っている

 リンは長ノ木までの帰り道を途中まで知っている。 長ノ木の人が、どこの角を曲がって この遊郭の街から出ていくのかを。 この遊郭の街が、リンの世界のすべてなのだ。 

ようやく気付く

 21~22ページまでのやり取りで、ようやくすずもこの街が何なのかを気付いたみたい。 でも、リンに対する態度は最後まで変えない。 

端切れの記憶 再び

 すずの着ていたアッパッパ(昔おばあちゃんにもらった着物)の柄から、広島の出ではないかと問うリン。 いくら戦前で物流が発達していないからと言って、この関連付けはいささか強引に思える。 劇場版のスタッフもそう思ったようで、映画では広島と呉の訛りの差に置き換えられている。 一方で、リンは本当にごく限られた世界の片隅しか知らないんだと考えることも出来る。 

すいかの思い出とあいすくりぃむ

 別れ際、本当に恥ずかしそうにすいかの絵をねだるリン。 リンの人となりがわかる貴重なエピソードだ。 どんな時代でも、そんな境遇においても、子供のころに食べた味は忘れられないものだ。 私は最終回に出てくる俵型の海苔むすびが食べたい。 お弁当箱に入って、海苔がふやけてるやつ。 カンザシ代わりに鉛筆を髪に挿しているすず。 生まれながらの絵描きだ。 一方、鉛筆など持っていない(字書けないし)リンは、はじめ紅筆で描いてと言っていた。 「りんどうの秘密」の回につながってる。 そういえば、すずがあいすくりぃむを食べられるのはいつ頃だろう。 朝鮮動乱で景気が上向く25年以降か?

ていねいに描かれる帰路

 また来るというすずに、やさしく、そして厳しく ”こんな所へさいさい来るもんじゃない”というリン。 この町の正体を知っても自分への態度を変えなかった優しい娘に、住む世界が違うということを伝えるのだ。 この時、二人はまだお互いの名前を知らない。(リンの名は呼ばれているのだが、すずは聞き逃している) 

 郵便局の角を曲がって、いまも残る三ツ蔵の前に出てくる帰り道が、1ページまるまま使って丁寧に描かれる。 別の世界に迷い込んだおとぎ話のヒロインが自分のいる世界へ戻る過程を表しているようだ。 帰り道のすずの顔から笑みがこぼれているのは、無事に家に帰れる安堵からだけではないはずだ。

8月4日、「一億国民総武装」閣議決定。 あの竹槍訓練が始まる。

8月10日、グアム島守備隊全滅。 8月23日、「女子挺身勤労令」「学徒勤労令」公布。 自主的だった挺身隊の勤労奉仕活動が強制化される。 終戦時の女子勤労隊員は約47万人と言われる。 


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