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第29回 20年4月 [下巻]

「第29回 20年4月」 掲載’08年(H20年)5月6日号 (発売日 同年 4月15日ころ)

空襲時の心得

 すずが常会で習ってきたメモをもとに空襲時の心得が紹介される。 1ページ目は警報が鳴ったら、2ページ目は避難とその後の消火活動(国民の義務である)。 2ページ目左側は焼夷弾ではなく爆弾投下時の心得。 『流言や不安の種になるやうなことは たとへ見ても言はぬこと』 すずさん、これ意味わかって書いてますか?? 3ページ目は防空用器材の説明。 防毒面があるのに注目。 有害ガスを想定している?? 4ページ目は非常袋や救急袋の中身。  

刈谷さんの息子さん

 刈谷さんの息子さんの出征。 すでに刈谷さんの旦那さんと弟さんが戦死していることが明らかになる。 これまでの戦時もののドラマでは、まず赤紙(召集令状)が来て、地域の住民総出で万歳三唱で送り出す一方、もの陰で家族や恋人が声を潜めて泣いているという描写が行われていたが… この作品には赤紙は一切出て来ない。 そして、お隣さんたちがいやいや見送りに来ていることが描かれる。 万歳三唱のシーンも空襲警報で蹴散らされるように散開するのだ。 絶対に型にはまった戦時描写はしないという作者の意地が伝わってくるようだ。 でも実際、ご近所さんの心の中はこうだったのだろう。

焼夷弾のなかま

 5ページ目には焼夷弾のバリエーションが説明される。 焼夷弾攻撃は、木造家屋が密集している日本特有の都市事情に注目して採用された攻撃方法だ。 焼夷弾で日本人を都市ごと焼き払い、戦意を喪失させようとしたのだ。 当然、多くの死傷者が出ることは想定済みだ。 各焼夷弾に共通して言えるのは、水をかけただけでは決して消すことが出来ない点だ。 水に入れるか、ムシロで密閉するなど、空気を完全に遮断しなくてはいけない。(テルミットなどの酸化剤が入っているものはそれでも燃えてしまうが…) 6ページ目は家屋の準備。 このように空襲に関する情報が事細かく説明され、読者に対しての事前情報刷り込みにもなっているのだ。

技術バカのおとうさん

 焼夷弾の燃焼剤や飛行機雲の発生メカニズムを滔々としゃべるおとうさん。 この数回で、おとうさんのひたむきな技術者としての一面が強調される。 おとうさんは、日本の発展(と勝利)を信じて、日夜働き続ける勤勉な良き日本人の象徴として描かれているのだ。 そのおとうさんも、のちに日本の現状を認識することになる。 大気が低温・多湿で、かつ大きな空気の乱れが発生する場合は地上でも飛行機雲が発生するんですよ、おとうさん。 少し前のF1で見られた縮流現象です。

B-29

 B-29は全長30.19m、全幅43.07m、自重31t以上という、巨大な爆撃機だ。 日本軍の1式陸攻(全長19.97m、全幅24.88m、自重7t)や米軍のB-17(全長22.648m、全幅31.447m、自重16.4t)と較べても、その大きさがわかるだろう。 2200馬力を発生するエンジンを4つ搭載し、9t以上の爆弾を積むことが出来たが、日本空爆の責任者だったカーチス・ルメイは、防御用の機銃を取り外させて重量を軽くし、さらに多くの爆弾を搭載させたという。

 この4月だけでも、2日 東京武蔵野、3日 群馬県大泉町、4日 東京大田区、立川市、7日 東京武蔵野・名古屋・津市、越谷市、8日 玉野市、鹿児島市、11日 沼津市、12日 東京武蔵野・田無、郡山市、13日 東京城北、15日 東京大田区、川崎市、16日 京都、19日 東京大田区、福岡、20日 倉敷市、21日 宇佐市、鹿児島市、22日 京都、23日 沼津市、26日 鹿児島加治木町 が空襲された。


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下巻 [下巻]

コミックス下巻 ’09年(H21年)4月28日第1刷発行 (発売日 同年 4月28日ころ??)

表紙カバー

 表紙カバーの絵は北條家の屋根の上で屈託なく笑うすず。 誰もが見たかった笑顔だ。 髪がおさげになっているので8月8日以降と思われるが、トンボもいるので秋か?(このトンボはよく登場しているが、何か深い意味があるのか?) 右手がカバーの折り返しに隠れているので(このコミックスを買った人が必ずやるように)カバーを開いてみると、なんと”みぎて”がある!! 

本体表紙+裏表紙

 本体の表紙には割烹着を着たすず(両手を後ろ手に組んでいるので、みぎてがどうなっているかはわからない)と、空襲対策用の道具がずらり。 上・中巻とは異質な雰囲気が漂う。 かぼちゃの花とジャガイモ(ええ具合に焼けとる?) そして少女の母の最期の施しである海苔とご飯が… 

 裏表紙にはやはり空襲対策グッズとかぼちゃの花、晴美の小物入れ、伝単にチョコに米軍の残飯雑炊。 そして鬼ぃちゃんのおよめさん。

カラーページ

 表紙を開くとカラーページ。 二河公園の桜の上にいるすずとリンの絵。 リンの髪が降ろされているので、これはイメージ絵ですね。 そしてカラーページは本編中にも。

参考文献+あとがき

 巻末には参考文献とあとがきが。 参考文献があるのは「夕凪の街 桜の国」と同様ですね。 戦前の中国新聞などを参照されていることがわかる。 また補足として、上巻の呉初空襲警報の訂正などが載っている。 間に合いましたね。

発売日は4月28日?

 ところで、上・中巻では発行日と実際の発売日は一月ほどずれていたのですが(発売日が先)、この下巻はどうも発行日と発売日が同じようです。(調べた限りでは) 双葉社さんのルール変更? 連載が終わったから?

新装版コミックス

 この作品には今流通している上・中・下巻からなるワイド版コミックスのほかに、前編・後編からなる新装版のコミックスが存在しています。 これは、H23年8月5日に日テレで放送された実写版ドラマ(主演 北川景子)をあてこんで... 記念して刊行されたもので、通常のアクションコミックスのサイズで、前編が第1回のカラー扉が表紙で、後編がこの下巻のカラーページが表紙になっています。 ’11年(H23年)7月21日第1刷発行+発売。 

 残念ながら双葉社さんが見込んでいたほどは話題にならず、つい最近まで在庫があったようです。 (今年初めのアクションコミックスHPでは”発売中”となっていた) 今店頭で売られているコミックスの帯には、”累計100万部”とか書いてあるので、まあ、よかったじゃない。

すずさんのトレードマークが?! 

 なお、下巻の初版本では、表紙のすずさんのほくろが描かれていない。 これは右手が描かれていることを含めて、すべての撮影を終えた主演女優さんがメイクを落としてセットの上でくつろいでいる様子を描いた、いわばカーテンコール(*)を表しているのではないかとか、この表紙に描かれているのが本当のすずさんで、この物語自体が彼女が語った物語なのだというメタフィクション説とかで盛り上がった...かどうかは全く知りませんが、真相は意外とシンプルで、編集さんが原稿の汚れと勘違いして消しちゃったということらしい。 おいおい!!

 ファンの方が初版本を持ってサイン会に行き、こうの先生に直接ほくろを描き足してもらったという、心和む話も伝わっております。  第2刷からはちゃんとほくろが描かれています。

 (*) 本編が終わった後に幕が下り、幕が再び開いた時に登場人物が観客(視聴者/読者)に感謝の礼をするという、まるで作品自体が演劇の一部だったという演出手法。 手塚アニメの「ワンサくん」や、山口貴由の漫画「覚悟のススメ」などで用いられている。 特に「ワンサくん」では、ようやく探し当てたお母さんがラストに死んでしまうという悲劇的な結末のため、低年齢の視聴者のためにこの手法が用いられたと言われている。 (”ばけもの”の再登場といい、この作品で用いられても不思議ではなかったが、本作では我々の予想をはるかに超える演出がなされましたね。)


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中巻に関する年表 [中巻]

「この世界の片隅に」 中巻に関する年表

 クリックすると大きくなります。 元寇は中巻から出てたのね。

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作者の著作関連の年表

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第28回 20年4月 [中巻]

「第28回 20年4月」 掲載’08年(H20年)4月15日号 (発売日 同年 4月1日ころ)

正装のリン

 花見に来た二河公園でリンと再会するすず。 初めて見るリンの正装(?)に思わず見とれる。 ひょっとして、リンは位が上がったのかな? 初登場の時は自分で客引きをしていたが、これは位が下の遊女がすること。 接待とはいえ外出も許されているし…

木登りするリン

 手慣れた様子で木に登るリン。 やっぱり座敷童子時代の経験が生きている? 一方、こちらもいとも簡単に登っちゃうすず。 この二人、結構身体能力高い?

ごまかすリン

 すずにもらった茶碗が周作が買ったものと知った後の反応。 とっさにごまかしたが、リンは一瞬で理解したのだろう。 周作が本気で自分を娶る気でいた事、そして、すずがすべてを知っていながら自分に届けてくれたことを。 そして確信したのだ。 周作のことはもう”シアワセになったかなあと心配しなくてすむ”ことを。 だから、この後のセリフにつながるのだ。

テルの形見

 テルの形見の紅をすずに託すリン。 なにもすずに渡すために常日頃持ち歩いていたのではないだろう。 自身でテルの思い出を受け継ぐつもりで持っていたはずだ。 そして、いまそれを自身の思い出とともにすずに託す。 テルの死と空襲の現実を実感し、リンもまた心残りの無いように今を生きようとしているのか?

秘密は無かったことになる

 一年のうちに一瞬だけ華やかに咲き、未練も残さずにパッと散る桜は日本人の死生観に合っているという。 その桜の花の中で、すべての秘密をあの世まで持って行くというリン。 それはそれでゼイタクな事だと... 近い将来の二人の別れを暗示する印象的なシーンだ。 このエピソードは劇場版ではカットされているが、海外向けの予告編には、一瞬このシーンが写っている。  

再会する二人

 すずがテルに想いを巡らしている時に再会する二人。 お互い笑って別れられた。 そう、この二人にとっては、もうお互い、思い出の人にすぎなくなったのだ。 笑っている周作を見て安心するすず。 すずにとっても、この話しは終わったかに見えたのだが…

リンに生きる目的はあるのか?

 周作との思い出と決別したリン。 ではこの後、リンには何か生きていく目的があるのだろうか? リンが本当に今の境遇を自分の居場所と思っているのなら、呉で一番の太夫や花魁になるという道もあるだろう。 一方で、リン自身は実は二葉館に借金があるわけではない。 せいぜい養育費くらいだ。 だから、早いうちに足を洗って、どこか遠くの土地で人生を一からやり直すということもあるだろう。 リンが本当はどう思っていたか? それはもう永遠に分からない。

そして今生の別れ

 ”今生の別れか思うて...”という周作。 奇しくもこれがリンと周作、そしてリンとすずの今生の別れとなった。

 4月1日、米軍が沖縄本島上陸。 これに対抗すべく、沖縄に出撃した戦艦大和が米軍機のべ386機の猛攻撃を受け、7日鹿児島県の坊ノ岬沖で沈没。 2740名が犠牲となった。


この掲載号には、「夕凪の街 桜の国」の映画版のDVDと漫画の文庫版発売を記念して、原作者こうのさんと映画主演の麻生久美子さんの対談記事が掲載されている。


なぜ上・中・下巻なのか?

 各登場人物が身近に迫る”死”を実感し出した中巻。 ところでなぜこの作品の単行本は1・2・3巻ではなく、上・中・下巻なのだろうか? 私は、当時の読書記録を残しておられる、ある方のブログをウオッチさせていただいているんですが、ちょうど上巻の告知が出た頃に、「物語も半分くらい来ているのか...」という感想を書いておられたのを見過ごしていました。 そうだね、最初の単行本が”上巻”だったら、上下巻か上中下巻のパターンしかないよね。 人気とかに関係なく、この物語にはあらかじめ物語の初めから終わりまでの長さが決められていることを宣言しているのですね。 


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第27回 20年3月 [中巻]

「第27回 20年3月」 掲載’08年(H20年)4月1日号 (発売日 同年 3月18日ころ)

着せ替え ”はるみ”ちゃん

 小学校入学を迎える晴美と必要な学用品が着せ替え人形のように並べられたタイトルページ。 配給ポイント制が分かりやすく解説されている。 背嚢=ランドセルは高級品かと思ったけど、買えたんですね。 

空襲被害は軽微

 空襲の被害は軽微との情報操作がなされていることがわかる すずのセリフ。 実際の被害は前回の作者注参照。 ”空襲の相場を知らんけえのぉ”という周作のセリフは、まだ大本営発表を疑っていないということ? 呉の人は港に入ってくる船の状態を見れば、だいたいの戦況はわかると思うのだが… 

周作が調べているのは

 周作は捕虜の軍法会議の準備をしている様子。 戦闘で敗れそうになった時、降参して捕虜になることは、実は立派な軍事的作戦である。 捕虜の扱いはジュネーブ条約に定められており、おいそれと虐待や殺戮を行ってはいけないのだ。 捕虜になることで、相手国に余分な兵糧を使わせたり、行動を制約させることも出来るのだ。 日本はジュネーブ条約に署名はしたが軍部の反対で批准していなかった。 ただし、日米開戦後にジュネーブ条約の趣旨に則った行動をすることを表明している。

 だが、実際は17年の「バターン死の行進」など、捕虜の扱いが芳しくなかった例もある。 日本兵自体、捕虜になるのは恥として、最後の一兵まで徹底抗戦することを求められた。 だから、日本軍は各地で全滅するのだ。 また、沖縄地上戦でも多くの市民が自決を強いられている。 反対に、捕虜となった日本兵が過酷な強制労働を強いられた事例もある。 終戦後、ソ連が武装解除した日本兵をシベリアに送り強制労働させた「シベリア抑留」である。 実に34万人もの日本人が死亡したとされ、また生き残った者でも、長い者は31年まで日本へ還れなかった。

 なお、「はだしのゲン」の中には、広島市内で自分たちの収容所の屋上に”P”(Prisoner=囚人の意)と書いて空襲目標から逃れる米軍捕虜と、それを真似する市民のエピソードがある。 いずれも、原爆によって亡くなってしまうのだが…

大和の行く末

 大和が戻ってきたとのセリフがある。 大和は19日の呉初空襲の際、いったん徳山沖に避難していたのだ。 その後、呉港に戻ってきた後、3月28日に佐世保に向かって出港。 しかし、空襲の恐れがあるため再び徳山沖に待機した。 そして、大和が呉に戻ることは二度となかった。 30日に米軍によって広島港と呉港に大量の機雷がバラ撒かれたため、そのまま徳山で待機、そして4月6日未明に沖縄特攻へ出撃したためだ。 関門海峡にも大量の機雷がまかれていたため、大和には豊後水道を通るルートしか残されていなかった。 米軍は待っていればいいのだ。 劇場版のお父さんが、”せっちん詰めにされた”というのはこのせいだ。

みんな仲良し?

 絶対来んという晴美。 ここは、劇場版ではストレートな表現になってましたね。 

空襲被害に圧倒される二人

 初めて見る空襲の実際の被害に圧倒される二人。 そして被災した子に、晴美のために苦労して集めた学用品を差し出す径子。 性格はきついが、慈愛の心を持っていることがわかる。

素通りする二人

 このシーンは衝撃的だ。 先ほど、慈愛の心を見せた、そして何より常識人の径子と、ボーっとしているけど人一倍感受性が強いはずのすずが、空襲の犠牲者の横を見て見ぬふりをして素通りするのだ。 人は、自分の理解の限度を超えると、もう どう対処していいか分からなくなるということなのか? そして、この事は後にすず自身を苦しめることになる。 遺体が放置されているのは、壕に避難しなかった罰だと言われている。 ”防空法”では、空襲の際、市民は一時避難の後に速やかに消火活動にあたることが義務とされている。 その第一歩、避難をちゃんとしなかったための見せしめか? 

千鶴子出生の謎

 気まずそうに教科書の話をする二人。 ここで、すずが(実は)とんでもない発言をしている。 草津の従妹=千鶴子の時は「サクラ サクラ」だったと言うのだ。 尋常小学校が国民学校となった16年4月より、1年生の「ヨミカタ1」も変更されている。  まさに「サクラ サクラ」から「アカイ アカイ」へである。 とすると、千鶴子は15年度以前に小学校に上がっていなければならない。 15年4月に入学したとして、この場合の一番遅く生まれた時の誕生月は9年3月である(戦前も早生まれがあったとして)。 すると、「大潮の頃(10年8月)」の頃には生まれてないといけないのである。 いませんねぇ、千鶴子。

 これを、”すずはうっかりモノなので、前年か前々年の記憶と混同している”と考えると、実は この作品のもう一つの謎が解決するのだ。 そう、それこそ、座敷童子さん=リンとすると生じる、ある矛盾である。  千鶴子とリンの矛盾を同時に解決するために一番都合のいい解釈は、千鶴子は8年3月以前の生まれとすることである。 そうすれば、7歳のすみが8歳のすずにおんぶをねだるのもうなずける。 ただ、逆に、7歳のすみがすいかを持てるか? 8歳のすずの着ものを大人用のアッパッパに直すのは難しいんじゃないか? という疑問が新たに生じる。 千鶴子が9年3月以前の生まれなのがちょうどよいのだが…

 実は劇場版では、「大潮の頃」のエピソードの時に森田の叔母ちゃんが赤ん坊を背負っているのだ! 1歳5か月以上の大きさではない。 ちょうど5カ月以上の大きさの子供だ。 どうやら劇場版は、”千鶴子は9年3月以前の生まれで、すずは9年8月と混同している”説を取っているようである。 やるなぁ、劇場版。  

 もっとも、”千鶴子の時は「サクラ サクラ」”というのが、そもそも間違っているのなら 元も子もないのだが。

この世界には2種類の人間がいる

 教科書に落書きをする人間と、しない人間だ! これは二人の性格の違いをよく表している。 真面目な径子にとっては、教科書に落書きする人間の気持ちなど想像できないのだろう。

微笑む径子

 129ページの4・5コマめ、久夫の教科書を見入る径子の表情が 驚き⇒微笑みに変わる。 一方で、後ろの3人の表情が 微笑み⇒驚きに変わる。 見事な対比だ。 教科書に落書きする すずの気持ちはわからないが、久夫の落書きからは、久夫が楽しく学校生活を送っている様子が垣間見えるのだ。 息子と遠く離れて暮らす母親にとって、これ以上の宝物はない。 (どこかのページに”お母さん”とか書いてないか?) それがわかっているから、家族全員で教科書を書き写すことになっても、誰も文句は言わないのだ。

同じ月、20年3月。 政府は国民学校初等科以外を1年間休学とすることに決めた。 必要な教員が確保できないからか? 高等科(現在の中学校)以上は労働奉仕させる為か? 


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第26回 20年3月 [中巻]

「第26回 20年3月」 掲載’08年(H20年)3月18日号 (発売日 同年 3月4日ころ)

ついに来たその日

 20年3月19日、それはいつものように穏やかな春の朝... のはずだった。 それぞれが朝の身支度を整え、仕事に赴こうとする時、米軍空母が日本に近づき、艦載機を発艦させる様子が水墨画のようなタッチで描かれる。 そういえば、いつの間にか外出する男子はヘルメットを、女子は防空頭巾を携行するようになっている。 周作は第24回からヘルメットを身に付けているな。 出勤する径子の後ろに砲台が描かれているのも印象的。

 この時、日本近海に12隻もの米軍空母が迫っており、実は前日の18日から激しい戦闘が始まっていたのだ。 九州沖航空戦と呼ばれるこの一連の戦闘。 既に帝国海軍には迎撃できるまともな空母機動部隊はなく、陸上基地を飛び立った航空機により迎撃は行われた。 特攻機による体当たり攻撃も行われたが米軍機動部隊はやすやすと包囲網を突破、翌19日の朝には一部の空母部隊が室戸岬沖80キロまで接近し、その艦載機を発進させたのだ。 

黒い塊として描かれる戦闘機

 すずたちの前に突然現れる米軍機は黒い塊として描かれている。 まあ、普通の主婦には航空機の知識なんてないから、本当にただただ黒い無数の塊が迫ってきているように見えたんだろう。 これを、色の付いた防空用識別弾と合わせて、”すずの描いた絵”として表現した劇場版の演出は秀逸としか言いようがない。 我々が劇場で、”空襲なのになんて美しいんだ!”と思ったように、当時の人々も ただただ訳も分からずに空を眺めていたのだろう。

いわゆる松山沖空戦

 この呉初空襲は、軍記もの好きの間では、”松山沖空戦”と言った方が分かりやすいだろう。 軍記物的に言えば、”3月19日朝、突如呉軍港を襲った米軍機に対し松山基地を発進した第323航空隊(剣部隊)の「紫電改」が迎撃、1時間余りの戦闘で米軍機52機を撃墜(54~58機の説あり)。 これに対しわが軍の損害は敵機に体当たりした偵察機「彩雲」を含めて16機と、わが軍の圧倒的な勝利であった”と。 そして、飛行機好きの少年たちは日米の戦闘機のスペック比較に話を弾ませ、どの戦闘機が一番かで盛り上がるのだ。 決して、その時、地上に居た人のことを考えたことは一度もなかった。 なお、当時の米軍の記録によれば、撃墜された米軍機は実際は十数機程度だったという。

熟睡するおとうさん

 それにしても、夜遅い残業から夜勤までこなすおとうさん。 広工廠の第11航空廠所属だそうですが、いったい何の開発・生産を担当しているの? 

 劇場版の晴美の質問に答えるならば、我らが紫電改の誉21型の離昇馬力(短時間のMax馬力)が1990馬力。 対するグラマンF6Fヘルキャットが2000馬力、F4Uコルセア(1D)なら2250馬力です。 チョット負けてますね、おとうさん。 もっとも、戦後に同じくらいの馬力の四式戦「疾風」を米軍が整備して、米軍が使ってるオイルとガソリンを使って飛ばしてみたら、最大速度が公称624km/hと言われていたのが687km/hも出たということなので、条件が同じなら勝ってるかも知れませんね。

 この呉初空襲の前の3月9日から10日にかけて、東京が大規模空襲に見舞われた。 東京大空襲である。 死者10万人以上、被災者100万人以上と言われている。

 3月13日 名古屋空襲。 3月14日 大阪空襲。 3月15日には硫黄島が米軍に占領され、同22日に日本軍守備隊全滅。 3月19日 再び名古屋空襲。 名古屋駅消失。 既に日本本土防空に有効な術はなかったのである。


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「長い道」文庫本 [番外]

ヨメさんの実家の近くのブックオフで入手した「長い道」の文庫本

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たいへん状態の良い本で、これで108円は たいへんお得。

双葉社さんの文庫は初めてですが、表紙カバー、本体表紙+裏表紙のイラスト、本体のカラーページ、そしてあとがきなど、ワイド版コミックそのままの文庫化なのがとってもGood!です。

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「この世界...」の下巻のすずさんの女心は、正直、男の身である私には100%は理解できない所がありますが、本作の道さんの心の底はもっとわかりません。 その道さんが、ぼそっと本心を吐露する場面は、グサリと心に突き刺さります。 「長い道」、いい作品ですよ。


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第25回 20年2月 [中巻]

「第25回 20年2月」 掲載’08年3月4日号 (発売日 同年2月19日ころ)

討ち入り?

 すずの特殊体質が明らかになる今回。 闇市に買い出しに行くついでに二葉館に茶碗を届けに行くすず。 だが、討ち入りと間違われ相手にされない。 ここでいう討ち入りとは、夫や恋人を寝取られたと思った女が直接遊郭に乗り込んで、”うちの旦那にちょっかい出すのはやめて!”と直談判?というか殴り込みに来ることだ。 そりゃ間違われるわなぁ、竹槍持ってるし。 この漫画では、竹槍が本来の役割で使われていない気がする。

いとも簡単に心中に付き合うテル

 そんなすずを呼び止めたのが、赤毛の女(テル)。 さして親しくもない水兵との心中に付き合ってしまい、風邪をひいて闘病中だ。 まず、水兵が身を投げるという異常さ。 やはりレイテ沖海戦の生き残りなのだろうか? 一方のテルも何故簡単に身投げに付き合うのか? 当時の境川があまり大きな河川ではなく、溺死の危険性が低かったとはいえ、”気の毒”なだけで体をくくられて飛び込むか? 一方で、”夜までに風邪直さなきゃね”と、夜には営業に戻るつもりでいる。 この子の”生”への執着がよくわからない。  

そして第4の方法

 ”暖(ぬく)い外地へ渡る”というテルのセリフ。 これは、台湾の遊郭に渡るか、あるいは従軍慰安婦に志願して慰問団として南洋の島へ渡ることを意味している。 これこそが、この時代限定の、遊郭の街から出る第4の道なのだ。 いま、従軍慰安婦はすべて ”かの国”から強制徴用された少女だけで賄われていたと誤解している人もいるかもしれないが、実際はその多くは食うために自ら志願した日本人女性なのだ。 

 そしてもう一つ誤解されている点、従軍慰安婦は我が国にとって決して秘密でも何でもないのだ。 今の倫理基準からすると信じがたいかもしれないが、それはれっきとした、正当な対価を受け取られる職業だったのだ。 昭和40年代から50年代にかけて、岡八郎や原哲男などが活躍していた吉本新喜劇の全盛期、劇の舞台としてダムの建設現場、場末の飯場に交じって、南洋の最前線の島を舞台とした”戦場シリーズ”というのがあった。 そこでは片岡あや子扮する慰問に来た従軍慰安婦と木村進などが演じる新兵との道ならぬ恋が描かれていたものだ。 それだけ、日本人の間には従軍慰安婦というものが身近にあったのだ。

 かの国の”元従軍慰安婦”たちが政治的な背景を持つ市民団体と結びついて、その声を大に表に出てきているのに対し(そのきっかけを作ったのが、その支援団体の幹部を身内に持つ元朝日新聞記者の”誤報”記事だということを忘れてはいけない)、我が国の元従軍慰安婦の女性たちはその自らの口を固く閉ざし、歴史の中に消えて行った。  

波のイルカ?

 テルのために雪の上に竹槍で南国の絵を描くすず。 すずさん、こういう大きな絵だと左手だけでも結構うまく描けてますよ。 南の海に、ヤシの木に、波のイルカ... ラッセンかい!

次第に大きくなるリンの影 

 今回、リンは一度も顔を見せてはいない。 だが、すずの心の中でリンの存在は、さらにさらに大きく重くなっていく。

 この年の2月4日から11日にかけ、クリミア半島でチャーチル、ルーズベルト、そしてスターリンが会談を持った。 ヤルタ会談である。 これにより、ソ連の対日参戦が決まる。


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第24回 20年2月 [中巻]

「第24回 20年2月」 掲載’08年(H20年)2月19日号 (発売日 同年 2月5日ころ)

初の戦死者

 この漫画初の戦死者は鬼ぃちゃん。 鬼ぃちゃんはニューギニア戦線ということまではわかっていたが、劇場版では18年4月の出征で、所属は鯉部隊(第5師団)という肉付けがされている。 鯉部隊は広島山口島根出身者で編成された部隊だった。 喪服で神妙な面持ちのすず。 のっけから重たいオープニングだが… メジロに椿の花のコマがあるのは時節の説明か?  

遺骨でコント?

 江波の実家に戻ってきた一行。 すずにとっては2回目の里帰り。 と、始まったのは遺骨箱を巡るドタバタ。 まるでコントである。 誰も遺骨箱に対しての敬意がない。 あるのは不審感のみ、誰も要一が死んだとは思っていない。 実感が伴わないのだ。 周作が「遺骨全部は持って帰れん」というが、そもそも日本軍は全滅するので遺骨を拾う人などいないのである。 

定型文?な挨拶

 防空壕で水原の母と一緒になる。 水原が立派になっていたとのすずの感想は、あまりに定型文すぎる。 まわりは身内だけなんだから、もっと素直に感じた印象を語ればいいのに。 水原は水兵の兄の遺志を継いで志願兵になったので、立派な兵隊となったと伝えるのが最善と思ったのか? それとも周作への配慮か?

石ころ? 脳みそ?

 食料をもらったうれしさで、つい、遺骨箱を蹴っちゃったすず。 中から出てきたのは、その辺の石ころ。 ついつい、脳みそと言っちゃうすみ。 気持ちはわかるけどな... 玉砕の地で逝った兵士の遺骨箱には、本当にその辺に転がっている(日本の)石ころを入れていたと聞いたことがあります。

気丈なお母ちゃん

 もっと立派な石を入れておけという お母ちゃん。 遺骨箱も片手で背負っちゃっている。(このコマは横向きに描かれている。 一応は敬意を表して、骨箱が横向きにならないようにしているのだろう。) これっぽっちも息子の戦死を信じていない。 本当に気丈なお母ちゃん。 まさに浦野家最強生物だ。 このたくましいお母ちゃんも、のちに一瞬にしてこの世から消えてしまうのだ。 

夫婦喧嘩

 心残りの無いように、夫に心のうちの不満をぶつけるすず。 負けじと周作も女々しい本音をぶつける(ほんとに根暗だったんだな)。 初めての夫婦喧嘩だ。 少しほほえましく思える。 ついでにリンのことも言っちゃえばよかったのにと思うのだが、そうすると話しが終わっちゃうか? ああ、そう言えば、結婚1周年でしたね。 おめでとう。


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劇場版 もう一回見に行ってきました [番外]

先週の日曜日、劇場版をまた見に行きました。 富士スピードウエイのイベントに行った後、そのまま三島に宿泊予定だったので上映館を探したところ、地元の三島は10日で上映終了ということ。 他にないかと調べたら、小田原が夕方からやってる。 富士を2時半ころに出て、ホテルにチェックインして新幹線に乗れば間に合うかな? ところが、直前に上映時間をチェックすると、日曜日は午前中から! ありゃりゃ。 ダメもとで、もう一回三島の上映を調べると17日まで延長。 上映時間も4時15分から、やった行ける!

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ほいで、行ったのがシネプラザ・サントムーン柿田川。 4時前について、お土産買って劇場に。

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お客さんは20人くらいでした。  前回2回は原作を読む前でしたが、今回は原作よく読んで、年表も作って時代背景をよく理解して、そしてサントラの劇中歌もよく聞きこんでの視聴。 おかげで、今まで気付かなかった演出などにも気づくことが出来ました。 前回は2回とも、なぜか例の旗を見逃していたのが今回はしっかり確認できました。 闇市の千福の看板もわかったし、ジープを観察する大塚少年も確認できました。 あの道の塀の向こうにはクレーンが見えてたんですね。 少女と母の登場シーンには、ちゃんと朝食のカットも入っていたんですね。 今回は、ほんとに良く見えた。 もう一回行ったら、また違うものが見えるかな。 

原作を読んで数か所 疑問に思っていたことがあったのですが、劇場版ではしっかりとフォローがされていました。 さすが時間をかけて作っただけあるなぁ。 今回、印象に残った演出は すずが呉に初めて来たころの空気感。 遠くに演習の大砲の音や、航空機のエンジン音が聞こえて来て、いやがおうにも軍都って感じが出ていましたね。 

そして、今回一番ツボにはまったシーンは里帰りの時の浦野家の夕食! 公式HPの”すずさんのありがとう”メッセージの中にもチラっと出てきますが、ニシガイとかマテガイを煮た鍋。 鬼ぃちゃんのことを心配しながらも、貝をホジホジ食べてるのが良かった。 径子さんじゃないけど、まさに”漁民の夕食”。 美味しそうでした。

ちなみにサントムーン柿田川のHPを確認すると、”ついに24日で上映終了!”。 やめるやめる詐欺か! でも実際、今週か来週末で上映終了のところ多いよね。 山口みたいにこれから上映とか、浜松のシネマイーラみたいに再上映開始ってところもあることはあるけど。


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